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■ web連載小説 江ノ島ベイビィ● 第1回

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 そんな感じで激しめの荒っぽいロックを良く聴いているのだけれど、その音楽性について云々という話になると、ミッシェルはiTunesのジャンルというカテゴリーでは「ロック」に入っているし、ロックに分類されるのだろうなぁというおおよそのところ以上、詳しいことはまるで分からない。あのとき、白坂さんが余計なことを言わずに、那賀田くんと音楽話で盛り上がって、それがきっかけでその先もっと親しくなっていたら、色々と教えてもらって詳しくなったりもしただろうけれど、那賀田くんとは、それほどまでには親しくならずにクラスも高校も変わってしまった。ボクの方から進んで話をしようとしたことがあまりなかったのは、那賀田くんが、それほどカッコよくはなかったからだ。また、時々、朝に食べた目玉焼きのかけらとかをシャツにつけたまま気づかずに登校してくることがあって、本人は満面の真っ赤な笑顔でドジっ子(かわいらしいドジな人のこと)を気取りながら、指ですくって食べたりもしてみせたけれど、ボクや他の女子から見ると「ヤメてください」という感じでしかなく、素直に流しにでも捨ててくるか最初からそんなものがシャツにつかないように気をつけるかしてほしいというのが本音だった。なんとなく笑っていたりもしたけれど、それはもはや笑うしかなかったからで、那賀田くんの言動にウケていたわけではない。
 池袋で弾き語りしていたのは男の人だったけれど、その曲は大人の女性を主人公にした歌謡曲っぽい歌だった。本当に一歩も足を止めることなく、西武(だからボクの住んでいた江古田は「えこだ」であって「えごた」ではない)からJRまでの短い道の間で、耳に届いた分だけが頭に入っただけだから、確かなことは言えないけれど、恨みますとか幸せとか演歌じみた単語が歌詞には並んでいたような気がする。それでいてギターの演奏は軽快で、メロディも妙に聴き易い感じで、浜辺の爽やかなセンチメンタルというイメージが似合っていた。どこかで聞いたことがあるような気もするけれど、誰のなんて言う曲だかは分からない。一般的には鎌倉と言えばサザンオールスターズらしいのだけれど、曲調からして、そうではないとは思う。なにしろボクの年齢よりも芸歴の長いグループだし、ボクは最近になってテレビでかかってるような曲しか知らないから、もしかしたら膨大な持ち歌の中にはそんな曲もあるのかもしれないけれど。
 「恨み 幸せ 鎌倉」とか「恨 幸 鎌倉 女 歌詞」あたりでググれば、もしかしたら出てくるかもしれないと思いつつ、面倒だし、もういいや、とも思う。第一、パソコンを持って来ていない。持ち歩きできるようなノートパソコンやPDA(手のひらサイズの携帯用パソコン)は、最初から持ってはいないし、仮に持っていたとしても部屋に置いてきただろう。それ以前に、こんな場所で、そもそも電波が届くのか分からない。
 ポケットから携帯を取り出してみた。携帯電話だ。
 携帯の画面を観ると、アンテナマークはしっかりと三本立っていた。電波は無事に届いているらしい。つまり、少なくともボーダフォンでならネットには繋げられる、ということだ。携帯で直接ネットすればいいのだけれど、ボクの携帯ではwebページの閲覧はできない。



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